部屋の地図
丹野 義彦 · 作品社
七つの部屋が並ぶ不思議な廊下の反復だけでできた閉鎖世界で、引き起こされる不可解な事件……。カフカ『城』、安部公房『砂の女』を彷彿させる思弁小説。 《横の4面の壁のうち、3つの面には中央にドアがくり抜かれている。ドアと壁との間に隙間はないが、そこにドアの外枠を示すП型の線が走っているのがかろうじてわかる。3つのドアのうち、ひとつは廊下に面している。他の2つはそれぞれ両側のCとEの部屋に通じている。 廊下に面しているドアには、ドア面の4つの角を結んだ対角線の交叉するあたりに、掌を伸ばしたくらいの長さの棒が1本つき出している。棒は円柱で、先端は鋭い刃物でぶきっちょに切り落とされたような感じだが、この断面は部屋で唯一の円の存在であるためか、少し退いてドア全体に目をやると、棒の無骨さも幾分弱められてしまう。棒はもち ろんドアの把手になるべきなのだろうが、ドア面のちょうど真中にあるために、把手にしては位置が不自然になっている。棒がつき出ている根本の部分がひと続きにつながっていて、棒を後でドアに差し込むなり、くっつけるなりして取り付けたのではないらしいということと、さらに棒の不自然な位置とがこのドアを一層作られたものとして感じさせている。》--本書より
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