美味しさの内側
井上正康 · 方丈社
「あなたは、あなたの食べた物でできている」は、洋の東西を問わず、よく知られた真実。本来、「あれが食べたい」「これ、とても美味しい」と感じるものは、身体が求め、身体にいいはず。でも、その「美味しさ」は意図的に操られているかもしれません。 あなたが「美味しい」と感じる食品。それは本当に身体が必要としているからなのか、それとも、また食べたくなるよう精密に設計された味だからなのか。私たちの身の回りには、糖・脂肪・塩の組み合わせや、香り、色、食感によって食欲を刺激する超加工食品があふれています。その一方で、添加物や特定の食品をすべて遠ざければ健康になれる、という極端な情報も広がっています。何を信じ、何を選べばよいのか。食の不安は、不確かな情報によってかえって大きくなっています。 本書は、医学者・生化学者である井上正康が、味覚、脳、腸、血管、代謝、免疫を一つのつながりとして捉え、「美味しさ」が身体と心に何を起こしているのかを平易に解き明かす本です。マーケティングから設計された、食べ始めたら止まらなくなる「至福点」の考え方、超加工食品や食品添加物との付き合い方、口から入った食品や薬が器官・細胞・分子のレベルでどう処理されるかを、子どもにも伝えやすい日常の言葉でたどります。 本書が目指すのは、危険な食品の一覧を覚えることでも、特定の食材を一律に排除することでもありません。表示を読み、情報の確かさを見極め、自分の体調や生活に合わせて選び直す。そのための確かな土台をつくることです。 既存の添加物告発本や食事制限本が、病的なまでに「避けるもの」を示してきたのに対し、本書は「なぜ欲しくなるのか」「体内で何が起きるのか」「日々の食卓をどう立て直すか」を連続した物語として示します。 食は毎日のことだからこそ、逃げ回り、抜いてばかりでは続きません。正しい知識があれば、便利な食品も薬も、必要性とリスクを比べながら付き合えます。味の濃さに慣れた感覚を少しずつ戻し、素材の味や食べる喜びを取り戻すこともできます。読者が得るのは、禁止事項ではなく、自分と家族の食を自分で判断するための最も有益な物差しです。 健康を個人の努力だけに押しつけず、食品をつくる側、売る側、伝える側も「選びやすい環境」を考える。本書が広く読まれることは、食品表示や商品設計、医療・健康情報の伝え方を問い直すきっかけにもなります。知る。選ぶ。取り戻す。健やかな身体で笑顔になる。 食への不安を、身体の声を聞き直す力へ変える一冊です。
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